【Meet the Orchestra】指揮者とオーケストラの関係は、恋愛期間と同じ

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ーあと気になっていたのが、毎回指揮者が変わっていると伺ったのですが…

富: それ僕の方から言いますけど(笑)結局長くやると良い面もあるんだけど、自分のスケジュールに合わせて欲しいとか、自分の選曲をやるからってなったりするんで、あくまで主体は『鶴見室内管弦楽団』が持っていた方がいいんじゃないかって話になった。そう言いながらも、毎回毎回変えちゃうとそれもそれで……だから最低2演奏会くらいは、同じ指揮者でやるのが理想じゃないかな。そうすると飽きもこないし、どこかで緊張感も保てるし。

塚: 指揮者の良い面と合わない面があるわけですよね、それぞれ。それを私たちは吸収して練習できる。この指揮者はここが素晴らしかったとか。

富: 付かず離れずって言葉があるけど、指揮者との関係もそうなんじゃないかな。

泉: 2年ってちょうどいい。

富: 別に恋愛期間じゃないけど、長すぎた春も困るし、短すぎた春も困るし。

塚: もし気に入ったら、また間を置いて同じ方にお願いするとかね。

ー指揮者の方はどうやってご依頼されているんですか?

富: それは、つてがありますから。僕がこの前ね、外国に一緒に行った指揮者に「もし良かったらやりませんか」って声をかけたんです。バロックや古典は音楽の基本だから、「嫌です」っていう指揮者はまずいない。結構みんなそういうニーズがあるんじゃないかな?市民オケは、ストラヴィンスキーがいいとかそういう風になりがちな傾向になるけれど、室内楽的なこじんまりした楽団の方をむしろやりたい、手掛けたいって。

泉: 伊藤先生は、2016年〜17年の2年間でベートーヴェンの3番4番をやってもらってて。

富: 指揮者にとってみると、メンデルスゾーンのスコットランドっていう曲を、こんだけいろんな曲を指揮してても、意外に演奏初めてですっていう人がいるんですよね。そうするとスコットランドってトロンボーンもないし、室内楽的になるんですよ。チャレンジしてみたいっていう気持ちになるんじゃないかな。お金目当てじゃなくて。市民オケだとなかなか取り上げない。管楽器の出番がなくなっちゃうから。

塚: やっぱり音楽って、聴く人が美しいと思わないといけないんだと思うのよね。聴く人の心に届く音楽を演奏したい。だから、やたら弾けばいいってものじゃなくて、きちっとした、丁寧な、美しい音で弾くべき。そこに向けて私たちは一生懸命やりたいと思うんです。

富: 指揮者はみんな一生懸命ですよ。来る人は。

ーそういえば、(当団の)ホームページがあることを知らなかったです。どなたが作ってらっしゃるんですか?

富: うちの団員に専門家がいるんで、その人が作ってます。

ー例えば、団長、副団長、コンマス、ホームページを作る人、会場を取る人などの「役割」はどうやって決めていますか?

塚: なんとなくね、昔からいる人(笑)

富: 決まっちゃってるよね(笑)それでこの前も幹事会をやったんだけど、コロナ禍の中で色々変えてしまうと、ちょっとね。コロナが収まるまでこのままずっとやるかいって話になった。

ー変えよう、という話は今まであったんですか?

富: そりゃ今まであったよ。みんな歳にもなったし、新しい風を吹かせたいというのもある。今はなかなか動きづらい。どこもみんなそうかもしれない。縮小してしまったり、団員が出れなかったり。みんな商売でやってるわけじじゃないから。好意でやってるから。

塚: 結構団員の方は気持ちのある方ばかりで、お願いすると「嫌です」ってあまり断られない。例えば会計なんて面倒臭いですよね。でも「いいですよ」って気持ちよく引き受けてくださる方が多いのかな、どっちかというと。

ーそれはやはり皆さんの繋がりで集まってるから、「協力しよう」って気持ちになるんでしょうね。

塚: そうですね。変な揉め事とかあまりないし。

泉: 私は地元で教員をやっているんだけど、卒業生の方と保護者の方とか、その繋がりは結構あります。それと、役割についての課題は、若い世代の運営スタッフがいないこと。我々もいい歳ですから(笑)

富: 有名な先生です。

泉: それはないです(笑)なので意外なところで共通の知り合いがいることがあります。

塚: そうですね。やっぱり地元だから。

ー今回の演奏会はホールから依頼されたという風に伺いましたが、依頼されるようになるまでに、大変だったことや工夫されてきたことはありますか?

泉: 定期が年に1回なんですよ。でも秋には鶴見の文化祭というのに依頼されて、小編成の曲をやったり、それは欠かさずに受けてきて、信頼されたのかなと思います。11月3日の総持寺(横浜市鶴見区鶴見が丘)で演奏するのも依頼があるんですよ。結構みんな忙しいんだけど協力してやってるんです。

富: 年に1回の演奏会といえども、今コンマスが言ったように10月に文化祭、11月に野外でやる演奏会があって、考えてみれば年に3回のエキシビションがある

泉: 10年近くか。それを続けてきました

富: その度に雨が降ったり風が吹いたりして大変だとか「この楽器は外に出しちゃほんとはいけないんだけど」って言ったりしながら、でも11月3日は大体快晴なんだよね(笑)

ー依頼されるのはどういった経緯があるんでしょうか。

富: 塚田先生が鶴見区文化協会(以下、文化協会)との繋がりがあった。 今回の第九は、定期演奏会をサルビアホールができて10年ずっとここでやってるから、その実績が買われたんじゃないかなそれなりの演奏会やってきたから。

ー塚田先生は文化協会とどのように繋がったんですか?

塚: たまたま、今いらっしゃるか分からないけど、文化協会の中に昔からのお友達がいて、それで。

富: たまたまが多いんだよ。そんなもん(笑)だからこれから縁を作りましょう、という気はあまりない。うまく行ったときはうまく行くし、すれ違う時はすれ違う。

泉: 横浜市だと大きすぎるんだけど、鶴見だと小さいからまとまりやすい。鶴見のヴァイオリンの先生って何人かしかいらっしゃらない。

富: それはあるね。

泉: ここ数年ですよね。ホームページ見て入りたいっていう方は。

富: 弦がさらに増えてきてる。メンバーもう決まっちゃったんですけどっていうような嬉しい悲鳴。そのように管楽器もなってくれるとありがたい。

塚: あと練習が本番近いと毎週あるけど、普段の練習が「月に1回」っていうのが負担がなくていいっていうのも聞きますね。

富: 原則的には少ない。忘れちゃったんじゃないか、くらい(笑)年に1回の演奏会だから成り立ってると思う。

泉: 平均すると年に2回くらいはやってますよね。

ー曲選びやプログラム作りはどうやって決めてるんですか?

泉: まずみんなにリクエストで出してもらって投票をするんです。投票してもらうんですけど、その通りいくとは限らない(笑)

富: みんな下心を持ってるからね(笑)これやりたいね〜って(笑)でも団員の気持ちがあるじゃないですか。どうしてもこれやりたいとか。

塚: 時々コンチェルトを入れたりしてね。

泉: コンチェルトを入れるのは、やはりお客さんにとって演奏会としては聴き逃せないものがある。

富: 直近だとね、ハイドンのトランペット協奏曲とか、ヴァイオリンコンチェルトもやって、メンコンもやって、チェロコンもやって、一通りやったかな。

泉: なるべく地元の方を呼んで、お願いするようにしています

富: コンチェルトやると、オーケストラも勉強になるみたい。それも他の市民オケだとできないんじゃないかな。

ー確かにコンチェルトを取り上げる市民オケってあんまりないかもしれないですね。

富: みんなシンフォニーや組曲や、大味な演奏会になる。指揮者にとってみたら偏りががあるのってあんまりよくないと思うんだよね。それはそれで色彩があって面白いんだけどね。ちょっと飽きちゃった(笑)

次回、最終回!密着取材、団員インタビュー掲載予定。お見逃しなく!