【フルート吹き×会社員】”フルート吹いてたら頭良さそうに見えるじゃん?”

来年の1月に取材予定のアマチュア楽団、”オーケストラ・フォルチェ”でフルート奏者とインスペクターを務める鳥居丈裕さん。
アマチュア奏者としての活動や会社員との両立についてお話を伺いました。オーケストラ・フォルチェについてはまた今後ご紹介していきます!

フルート:鳥居丈裕さん

ーフルートを始めたのはいつから?きっかけは?

鳥居さん:フルートは小学校6年生から始めました。もともとスポーツが嫌いで、生徒会とかばっかりやっていてずっと趣味が欲しいなと思っていたんです。母がピアノの先生という事もあって音楽はもともと好きだったんです。ただ、母に熱血指導されるのが嫌でピアノだけは絶対にやらないと決めていました。一度学校で合唱のピアノ伴奏を任されたことがあったんですけど、その時に家で母の鬼のレッスンを受けて、二度とやらないとそこでも思いましたね。だからピアノ以外がいいなと(笑)でも小学校6年生の知ってる楽器なんて数えられるくらいしかなくて、弦楽器は小さい頃からやってないといけないイメージがあったので、当時思い浮かんだのはフルート・サックス・トランペットくらいでしたね。なんとなくフルートが一番いいなって直感で思って、イメージ的にもなんだか一番頭よさそうじゃないですか?(笑)それで母にフルートやろうかなって話してみたら良いよって。やるなら習いなさいって母から言われて先生を探しました。そこから高校卒業するまではその時の先生に習っていましたね。

ーレッスンの先生はピアノの先生であるお母様の紹介で?

鳥居さん:高校生までは地元の名古屋にいたので、ネットで”名古屋 フルート教室”で探しました。少し変わった先生だったんですけど、母が「その人絶対良い先生だから習いなさい」って言ってくれてその方に習いました。その方は音高も音大も出ていなかった人なんだけどスズキメソードの講師で立ち上げから関わっている方なんです。音色に対するこだわりが凄く強い人で、“とにかく良い音で吹け”って。フルートのJ.ゴールウェイ以外はフルートじゃないって教えられて、あの音こそフルートだ!!って、少し偏っていましたね。それから大学進学で東京にきて、大学のオケに入ったり、プロオケの演奏会だったりといろいろな世界をみたら、「フルートってゴールウェイ以外にも意外といっぱいあるじゃん!」ってなりました(笑)

ー最初にフルートを買ったのは?

鳥居丈裕さん

はじめはレッスンに行くために入門用の楽器を母が買ってくれました。母がピアノの先生だったからそこはちゃんとやろうって。

おとペディア

今の楽器は2代目ですか?

鳥居丈裕さん

いま使ってる楽器は厳密にいうと4代目かなあ。

おとペディア

凄いですね!楽器の選定はどのようにしてきたんでしょうか?

鳥居さん:1回目に楽器を買い換えたのは高校生になってからですね。そろそろ総銀の楽器にしようかって。フルートって、だいたい洋銀(500円玉と同じ素材)のフルートが多くて、その上に銀や金・プラチナの素材のものがあるんです。それで最初は僕も洋銀の楽器を使っていたんですけど、そろそろ総銀の楽器に替えても良いんじゃないかと先生から言われて。それを母親に言ったら「そうだね」って言ってくれて、50万円くらいのサンキョウというメーカーのフルートを買ってもらって、それで大学まで吹いていました。良い音は出せるけどもっといろんなことをやりたいと思ったら途端に楽器に困るようになったんです。でもバイト代で楽器1本買うのは厳しいので頭部管を何回か買い替えて調整していました。そういうのって音大生もよくやってますよね。頭部管を2、3本買い替えながら次の楽器を探していました。探しているうちに新宿のドルチェ楽器の試奏会で今使っている楽器に出会って、「あ、これだ」と思いました。メーカーはアメリカのヘインズのフルートで総金14K。700万円ぐらいする楽器で、当然当時は買えないな…。ってなりましたね。大学を卒業するときに貯金がローンを組めば買えるかなっていうくらいになったので100万円ぐらいの総銀の楽器に替えました。(3本目)それをしばらく吹いていて、社会人を3、4年やってお金を貯めて、今の楽器を買いました。ヘインズの総金14K。アマチュアではなかなかないかもね(笑)

使用楽器:ヘインズ 総14K ゴールド

 これは僕の考えなんですけど、アマチュアには練習する時間がないから、良い楽器を買った方がいいと思うんです。音大生とかプロは、1日何時間も吹けるけど、アマチュアの練習量だったらコントロール性が良くてちょっとの練習でレスポンスの高い楽器を買った方がいいと。楽器が助けてくれる部分ってとても大きいから。そのことを知ってる人は知ってるけど、うまく出来ないのが自分のせいだってみんな思い込んじゃう。管楽器は特にそうだと思うんだけど、音程が悪いとか、音が良くないとか低音が鳴らないとか。基本的には調整に出してって話なんだけど、その前に楽器がそもそも合ってないとかっていうのも原因にあると思うんですよね。”自分がやりたことが出来る良い楽器を買って、その分お金を稼いで仕事をして、少ない練習時間で”っていうのが僕のコンセプトです。なによりも、良い楽器を買うとやる気出ますしね。

会社勤めながらの練習はどのように?

鳥居さん:練習がしたいから17時で退勤できる会社を選びました。なるべく残業が少ない会社にして、楽器が吹けるところに住んで、雑務をやっても20時位から3時間は練習できるように確保しています。だから平日は夜2、3時間くらいかな。きっと僕はアマチュアとして全くアベレージではないと思います(笑)生活においての軸は音楽で、音楽をやりたいから仕事しているんですよね。
土日のどちらかは大体どこかしらのアマオケの練習が入ってます。

鳥居丈裕さんに聞いた!

ー会社員をしながら音楽活動するモチベーションは?

鳥居さん:団員のみんなと会えるのが一番ですね。それにやっぱり音楽って楽しいから、本番やって打ち上げで飲むビールのおいしさを知っちゃうとそれはもうね、やめられないよね(笑)本番の楽しさを知っちゃってるから、そこは大きいかなと思いますね。

ー練習していて壁にぶつかったりしますか?その乗り越え方は?

鳥居さん:ありますね。僕は人のマネをするのが上手いらしくて、それっぽいことができるんですよ。それこそ名古屋から東京にきて思ったのは、本当にいろんなフルーティストがいるなってこと。バイトしていろんな演奏会に行くようになったしCDも買うようになりました。何よりその頃からYouTubeで動画が沢山出るようになって、とにかく片っ端から音楽を聞けるようになったんです。それで、ゴールウェイじゃない音に目を向けた時に、”ゴールウェイはここをこうやって音を出していたんだな”っていうヒントが沢山でてくるようになったんです。”この人はこの楽器を使っているからこの音が出るのかな”とか”じゃあこの楽器試奏しにいってみよ”とか。とにかく沢山研究しました。

プレイヤーとしてソリスト的な上手さにも憧れはあるんですけど、指揮者の要求に「分かりましたこれですね」って出せるのがオケプレイヤーとして職人的な憧れがあって。”言われたことを出来るようにしたい”というのが積み重なっていったらいろんなことが出来るようになっていったんです。だから、出来ている人のなぜ出来ているのかをひたすら研究するっていうところが自分にはありますね。自分の引き出しを多くしたい。

ー現在もレッスンにいってるんですか?

鳥居さん:たまに行ってます。特に古典の曲を勉強しようと思うと、ひとりでやっていくのは限界を感じることがあって。正統派の先生にも習いたいしユニークな先生にも習いたい。自分の引き出しを増やすためにもいろんなスタイルの先生に習いたいなと思っています。煮詰まったときには練習方法を一緒に考えてくれる方もいますしね。

ー先生の探し方はどのように?

鳥居さん:演奏を聴いてですね。演奏会やYouTubeとかで聴いて、このひと凄いなとかって思うと調べて連絡取ったり。あとは所属しているオーケストラの指揮者の方が東京藝大出身なので、「どなたかいませんか?」とかって聞くと「知ってるよ~」って紹介してもらえたり。

ーアマオケの入り方は?

鳥居さん:まずは一緒にやれる(入れる)人をみつけるのがいいかもしれないですね。ひとりでだと続けるのが難しいのかもしれないと思います。初心者歓迎というところをみつけて、一緒に入ってみる。あとは憧れをつくるのが大切だと思います。”こういうことがやりたい”っていうのがないと楽しくないし喜びもないからね。小さな喜びが積み重なっていくと、気づいたら抜けられなくなっているんだよね(笑)

  アマオケでの練習風景

本番当日のGPの様子
※GP=(ゲーペー or ゲネプロ,と呼びますGeneral probe【本番前の最終リハーサル】)

♪本番♪

ビシッと着替えて全力で楽しみます

ー鳥居さんが将来的にやりことや目指すところはありますか?

鳥居さん:僕はなんでもできるプレイヤーになりたいんです、表現や技術的なところ全て含めて。出来るようになると、出来ていないことが見えてくるから。
具体的に何がやりたいっていうと、ニールセンのフルートコンチェルト(協奏曲)が吹きたくて。この前、有難いことにイベールのコンチェルトでソリストをやらせて貰ったんです。だからいつかニールセンもできたらいいなって。でもコンチェルトは自分ひとりで出来るものではないから、指揮者や団員のみんなに「やろうよ」って言ってもらえるようなプレイヤーになりたいですね。あとは30代のうちにリサイタルをやりたいと思っています。自分で一演奏会を企画して責任を持つっていう経験もしたいなと考えています。

イベールの協奏曲でソリストを務めた時の様子

音楽ってエンタメだと僕は思っていて、芸術であることももちろん大切だけれど、エンタメとして成立しているっていうことの方がやっぱり大事かなって。エンタメとして成立していて、それを聴いた人が芸術だと思えばそれでいいと思うんです。

オーケストラ・フォルチェのインスペクターも務める鳥居丈裕さんにご協力いただきました!
2022年1月の定期演奏会でもまた取材予定ですので乞うご期待!!