今回は東京藝大を卒業後からフリーランス奏者としてご活躍中の寺島貴恵さんにお話を伺いました!
Profile
寺島 貴恵 Kie Terashima, violin
東京藝術大学卒業。在学中に別府アルゲリッチ音楽祭、ウィスペルウェイ・フェスティバルなどに参加。卒業後、様々な分野で活動を開始。テレビドラマ「のだめカンタービレ」の撮影に参加。
2014年頃までロックオーケストラ「夜長オーケストラ」のコンミスを勤める。CD2枚をリリース。
これまで、ラフォルジュルネ音楽祭、客船「飛鳥II」、いわきアリオス大ホール(福島テレビ主催)、銀座王子ホール、霞ヶ関コモンゲートコンサート(文化庁主催)、高エネルギー加速器機構、富士ハウスゾンネンシャインなどにて公演。
また東日本大震災チャリティーコンサートを福島県の避難所また仮説所において行う。
モーツァルト生誕260年&日伊国交樹立150年記念コンサートにてソリストを務める。
2019年、Hakujuホールにて荘村清志、ダニー・イェと共演。
ピアニストの下山静香氏と2019年正式にDuo ANIMIS結成、2020年本格始動。
「生命を吹き込む」という意味を持つエスペラント語を由来とするANIMISの名のもと、北欧作品紹介を軸の一つとして活動中。
2020年3月には名曲集CD、7月には北欧作曲家の作品を集めたCDシリーズ第1弾がリリースされた。
現在クラシックを基盤としながら様々なジャンルで活動中。
ー大学卒業後すぐにフリーランスとして活動したんですか?
そうですね、一度も事務所などには所属はしていないんです。学生時代は留学したいなとか、クラシックも大好きだけどポップスとかロックも好きだなとか、いろいろ思いながら過ごしていました。オーケストラや事務所といったどこか一つに所属するとそこだけになっちゃうのはつまらないなと思っていて、ジャンルに捉われることなく色々なことがやりたいと学生時代から思っていました。
学生のうちは、弦楽器の先輩の繋がりから声をかけてもらってたまに演奏のお仕事をいただいていました。私自身は、声楽科や美術科の人たちと仲良くしていることが多かったので、周りと比べるとあまり沢山の仕事はしていなかったと思います。
ーフリーランス奏者として活動している普段の生活はどのようなものなのでしょうか?
ポップスのアーティストのライブやコンサートで弾いたり、クラシックの仕事まで幅広くやっています。バーでの演奏などもありますし、多い月もあれば少ない月もありますね。どちらも選べないくらい好きです。
唯一苦手なのはジャズかなぁ…。あれだけアドリブの応酬が出来る方たちは素晴らしいと思いますけど、私はあまりアドリブが浮かばないので(笑)
ーピアノとのデュオ活動もされていますがどのような活動をされているのですか?
私の姉がノルウェーに住んでいるのもあり、何度か遊びに行くことがあったんです。そこで現地の楽譜屋さんに行った時、綺麗で素敵な曲をたくさん見つけました。あまり知られていなくても素晴らしい曲ってたくさんあって、こんなにも面白いものがあるんだって驚きました。それを日本へ持ち帰ってきて、今まで何度か共演していたピアノの方に「一緒にやろうよ、デュオ組んじゃう?」みたいな流れでデュオを組んで活動を始めました。
ー学生とフリーになってから、音楽に対しての考え方の変化はなにかありましたか?
時間を守ろう(笑)私は学生時代本当に守れてなかったんです。当たり前のところなんですけど、フリーになってからはお金をいただくからというのもありますし、基本的な事として守っています。音楽的なところでは基本的にあまり変わっていませんが、学生の時は‟ちゃんと弾こう、上手に弾こう”っていう意識が強かった気がしますが、今はそれよりも音楽に入ろうと意識することの方が強くなりましたかね。とにかく楽しくやりたい。
それと、柔軟にやるっていうのは大切。学生の時は一つ仕上げるのに集中できたけど、仕事ではいろんな方々とお仕事しますし、皆さん各々の音楽性を持っていますので“すり合わせ”も必要になってくるんですよね。
エレキヴァイオリン
練習の様子なにやらとても楽しそうな寺島さん エレキヴァイオリン
ー学生の頃に学んだことで、今も役に立っていることはありますか?
音階練習とかは、まじめにやっていてよかったなって思います。
現場によって基本のラが違うこともあるんです。そこに合わせていく柔軟さっていうのは基本的な技術、基盤が必要だなと感じています。ポップスでもクラシックでも基礎はやっぱり大切ですね。
ーフリーランスで良かったこと、苦労したことは?
良いことは時間を自由に使えるところですね。私は旅行がすごい好きだから2、3週間とか海外に滞在したり、仕事を詰め込みたいときは入れればいいし自分の思うようにできるんです。あとはいろんな音楽が出来るっていうところも私には合っていて良いところですね。
大変なのは、不安定なところ。だから、何とかなるさと思ってやらないと大変だと思います。
意外と人生何とかなるから。
ー落ちた時や不安定な時の乗り越え方は?
何とかなる精神で乗り越えてきました。考えすぎて落ち込んでいても何にもならないんです。
けれど、やれることはやっておく。例えば、仕事がない時にもし生活費などに不安があったら、音楽だけじゃなくて他のバイトをしてもいいと思いますし、手段はいくらでもあると思うんです。音楽を続けながらでもよくて。そうすればなんとでもなるんですよね。とにかく考えすぎない事!
ーフリーランスのお仕事はどのように?
知り合いから話をもらうのがほとんどで、そこから少しずつ広がっていきますね。知り合ってから何年後とかに連絡がくる場合もあったりします。
音を出すときはいつでも真剣に音を出していたので、お客さんで聴いている人から「こういう仕事があるんだけどって」声をかけてもらうことも何回かあったんです。‟どうせ聴いてないでしょ”と思うようなところでも何に繋がるかは分からないので常に全力が大切です。
フリーランスとしてやっていきたいというのがあるのであれば、早いうちからいろんな人とコミュニケーションをとって人脈を広げていくのが大切だとも思います。
ーフリーランスに必要な確定申告やお金の知識は最初からありましたか?
最初は本当に全く分からなかったので、税務署にいって教えてもらいました。周りでは知り合いとか税理士さんとかに頼んでいる人もいましたね。
今はYouTubeとかで見れるようになっていると思うので、調べれば分かるのかもしれませんが私は何も分からずで…。
今みたいにSNSが主流の時代でもなかったので直接税務署へ行きました。
ーお仕事をする上で大切なこと、また寺島さんが大切にしていることを教えてください。
音を出すときはどんなに小さくても、簡単でも、どんなものでも真剣にやる。真剣に音を出す。
あとは出来るだけ人に優しく。
というのも、過去に自分が嫌な思いをしたことがあるんです。偉そうとか怖い人とか。だから人として最低限の思いやりをもって接するように心がけています。結局は人と人との関わりになるので。
ー将来の展望は?
このままやっていきたいですね。
基礎になっているのはやっぱりクラシックだからクラシックもやりたいし、決められないくらいどれも好きなんです。もし体がもう一つあったら、海外のオケに入ってみたかったです。オペラが好きだから、海外の歌劇場で演奏もしてみたいなと。北欧のオーケストラは年齢制限がないと聞いたことがあるので日本でやりたいことが出来たらオーディション受けるのもありかなとか考えています。
ー音楽を志す若者たちへ一言
同じことになってしまうんだけど、とにかく練習をしたほうがいいかな(笑)
後は人に優しく。そうするといつか自分にも返ってくると思うんです。あとは最初うまくいかなくても諦めないこと。すぐに順調にはいかないから、あまり大変だなと思わず。他の仕事をしながらでも音楽は続けられますしね。
SNSの時代だから周りと比べてしまうけれど、気にしないでほしいです。
腐らずに、何とかなるさと思いながら人に優しく、まじめに練習して、丁寧に音楽をする。
絶対に努力が報われるとは思わないし、絶対に平等だとも思わない。
人生そんな上手くいかないし苦しくて当然だと思っていると意外と楽だと思うんです。
上手くいったらラッキー!ってね。