【桐朋学園大学弦楽器専攻の1年生に聞いた】コロナ禍での受験と大学生活

      

 今後の音大受験や音大生活に対し不安を抱えている方へ、

少しでもこの記事がお役に立ちますように。

コロナ禍での受験を経て、現在、桐朋学園大学弦楽器専攻1年に在籍中の高野 大飛(たかの だいと)さん、池上 柊眞(いけがみ とうま)さん、芳賀 詩音(はが しおん)さん、吉田 藍(よしだ あい)さんの4名にお話を伺いました。

コロナ禍での受験準備のお話

高野 大飛さん

 私は宮城県仙台市出身なので、コロナが流行ってから頻繁に東京へ行き来することができなくなりました。そのため、Zoomやオンライン等を活用してレッスンをしていただいたり、コロナ禍でも開催されたコンクール等に参加することで試験対策を行いました。また日々の練習から本番を想定し、どんな状況でも弾けるよう、さまざまな時間帯での練習に取り組みました。不安なこともありましたが、先生や多くの方々にご相談させていただいたので、安心して取り組めました。

池上 柊眞さん

 コロナ禍によりリモートレッスンが普及したことで、レッスンを受けるために、鹿児島-東京間の旅費や移動時間などの負担がかからなくなったことは良かったことだと思いました。

 大変だったことは、レッスンを対面で受けることができないこと、また、発表会やコンクール等で演奏する機会が減り、人前で演奏することができなくなってしまったことでした。そのため、家族の前で演奏することで試験対策を行いました。

芳賀 詩音さん

 私にとって大変だったのは、ソルフェージュのレッスンがオンラインになってしまったことです。先生が演奏してくださるピアノの音に合わせて歌う、といった練習ができない状態だったので、自分でソルフェージュを学習する時間を増やさないといけなかったからです。

 実技のオンラインレッスンでは、自分の音が小さくなってしまったり、ニュアンスが伝わりづらいので、なるべく縮こまらずに演奏することを日頃から心がけていました。2020年4月〜6月以降は透明のパーテーションを入れるなど感染対策を行った上で対面レッスンを受けたり、発表会やコンクールは開催されているものがあったので、そういったものを探して積極的に受け、試験対策を行いました。

吉田 藍さん

 地元が長崎であること高校が普通科だったこともあり、受験準備がなかなかできない環境でした。受験準備を始めたのも遅く、スタートは高校2年生の秋冬あたり。進路を決めてから2年生の1月には音楽科のある県外の高校へ転校したのですが、直後の2月末からはコロナの影響により休校。それでも、学校側がすぐにオンライン授業の対応をしてくださり、自宅でオンライン授業を受けることができました。大変だったのは、私自身もパソコンが不慣れで戸惑うことが多かったり、友達との交流が少なかったことです。

 ソルフェージュの対策は基本的に授業のみで行いました。しかし授業のみでは回数に限りがあるので、授業で扱った聴音を自分で弾いたり、友達に新曲視唱を聴いてもらったり実技のレッスンの時に1曲だけ歌わせてもらったり、と数をこなして対策しました。

 桐朋の夏期講習はオンラインで、実技のレッスンのみ参加。その時に大変だったことは、先生が使用していたアプリが『FaceTime』だったんですが、それはAppleでないと使えないもので….私はAndroidユーザーでパソコンもMacではなかったので、慌ててネットでiPhoneを購入する、ということがありました。

高野さんの入学式の様子

実際の受験当日について

高野 大飛さん

 最初は対面受験のみを受ける予定でしたが、念の為、両方(対面、オンライン)の形式で受験することにしました。

 オンライン試験では、実技や副科ピアノ、ソルフェージュ、一般科目に加え小論文もありました。実技は事前に録画を送ります。私の場合は、何回も数日にわたって撮影を行い、1番良い動画を送りました。オンライン受験のメリットは、1番良い録画を送れることだと思います。聴音は学校から生配信で送られてきたメロディと一致しているものを選択する、新曲は画面に表示された楽譜をパソコンに向かって歌う、楽典はZoomの画面上に問題が表示され、試験官の先生の問いにその場で答える、という形式でした。新曲視唱と楽典については、対面受験と同じような対策ができていればオンラインでも対応できるかと思います。聴音は、聴いて書く練習だけでなく、答えを見ながら聴く練習も取り入れたら良いと思います。小論文は1週間前に課題が送られるので、期限までに提出しました。

池上 柊眞さん

 私は今回、コロナ禍で東京にいけなくなる可能性を考え、両方(対面・オンライン)の形式で受けました。

 オンライン受験では事前に動画を送らないといけないため、スタジオをとって撮影したりと、準備が大変でした。楽典の試験は、書いたりするのではなく自分の口で答えないといけないので、1発勝負で見直しもできず、その点はオンライン受験の方が不利であると感じました。 

 対面受験では、少しでも熱が出たりしまうと受験できないので、体調管理にはいつも以上に気をつけました。

芳賀 詩音さん

 わたしは、対面受験を選択しました。都内に住んでいるということもありましたが、2年前から夏期講習に通うなど準備を行っていたので、今までやってきたことをそのまま発揮したかったからです。

 新曲の試験はパーテーション越しで行われましたが、歌う時のマスク装着の指示等はなく、受験者の意思が尊重される形でした。普通に歌った時とマスクをつけた時の両方を録音して比較し、聴こえにくい部分を確認したり、発声練習を念入りに行うなど、私は日頃からマスクをつけた状態で歌う練習をしていたので、受験の時もマスクをつけた状態で新曲の試験を受けました。 

 伴奏合わせや実技試験、副科ピアノの試験はパーテーションなしでの受験。実技試験中のマスクの有無も選ぶことができました。コロナ前に受けていた夏期講習等とあまり変わらない環境で受験できたと思います。

吉田 藍さん

 対面とオンライン、両方の形式で受験をしました。チャンスが多い方が良いと思ったことと、オンラインではなく対面で自分の演奏を聴いてもらいたいと思ったからです。

 オンライン試験の科目は小論文、動画提出の実技、口頭試験の3つ。私の受験の時の小論文のテーマは「録楽と音楽」というもので、コロナ禍ならではの話題だと感じました。字数は1600字程度だったと思います。長い文章があり、それを要約した後に自分の意見を述べる形式でした。質疑応答は聴音、新曲、小論文、楽典についての質問が30分程度。自分が書いた文章や意見について細かく聞かれたり、小論文の文章の内容を聞かれました。小論文の内容をある程度覚えていないと答えられないような印象でした。

 個人的に1番大変だったのは、動画の提出。部屋によって聴こえ方が違ったので何度も調整したり、全曲を全曲通して演奏しなければならなかったので、1つでも気に入らないと撮り直しで、伴奏の方に何度も来ていただきました。

現在の学生生活の様子

高野 大飛さん

 基本的に実技の授業は対面、語学などの一般科目はオンラインで行われていますが、実技も感染状況によってオンラインになることもあります。オンラインレッスンはどうしても時間差があったりするので、聴き取りにくいというデメリットがありますが、レッスンが終わった後すぐに復習できるといったメリットも感じています。

 オンラインの授業はオンデマンド形式(録画されたものが配信される形式)なので、好きな時間に授業を受けられますが、授業を溜め込まないように時間の使い方には工夫しないといけないと思います。

池上 柊眞さん

 ソルフェージュやオーケストラの授業は対面なので、そこで友達と会えたり会話出来たりすることができ、楽しく学生生活を送ることが出来ています。レッスンは全て対面なので、そこは心配いりません。1限がオンラインで行われると時間に余裕ができ、気持ちにゆとりが持てます。

芳賀 詩音さん

 レッスンは頻繁にあります。オーケストラの授業も対面ですが、管楽器はパーテーションあり、弦楽器は人数が多いため半分に減らして交代での参加。緊急事態宣言等に関わらず、こういった対策をしながら授業が行われています。

 授業はオンラインのものが多く、好きな時間に授業を受けられるメリットもありますが、課題に追われてしまったり、映像の授業に集中できないと感じることもあります。

吉田 藍さん

 オンライン授業もありますが対面授業もあるので、意外に友達との交流は持てています。デメリットは、言語の授業がオンラインだと発音が分かりにくいことがあったり、学校の練習室は使えますが、部屋ごとに入れる人数が決まってしまっているので、練習室の予約を取るのが大変なことです。

吉田さんの入学式の様子

これから受験される方へ!ひとことアドバイス

高野 大飛さん

 両親や先生に受験直前までサポートしてもらったことはかなり大きく、感謝しています。受験直前だとどうしても気持ちが重くなったり心配になることもあるとは思いますが、適度に息抜きをすることも大切だと感じました。自信を持って前向きな気持ちを当日まで持っていけたら実力を発揮できると思います。

池上 柊眞さん

 このコロナ禍では本番で緊張をするという機会が少なくなっていると思うので、数少ない本番を今まで以上に大切にし、どうやったら本番で上手くできるか自分なりの方法を見つけてください。

芳賀 詩音さん

 自分が用意してきたことをそのまま発揮しよう、と考える方が上手く行くと思います。もちろん感染しないように気をつける必要はありますが、それによって自分の音楽や演奏が制限されたり縮こまらないような心構えがあるといいです。桐朋は夏期講習や冬季講習と同じような体制を作ってくれているので、その雰囲気を自分で覚えて望めばベストを尽くせると思います。

吉田 藍さん

 対面受験も普段通り大変だと思いますが、オンライン受験は経験が少なく知らないことも多いと思うので、保護者の協力が必須です。発表の場やコンクールもオンラインになったり無くなったりしているので、自分から積極的に聴いてもらったりすると良いと思います。

 学校生活の面では、英検を持っていると、学校英語の単位が免除されるのでおすすめです。

受験生の皆さん、体調には気をつけて、頑張ってください!
応援しています!!