【昭和音楽大学アートマネジメントコース】担当教授と学生にインタビュー!授業の一貫だけど「プロとして」演奏会を作る…その貴重な環境に迫る!

前回に引き続き、昭和音楽大学 音楽学部の音楽芸術運営学科 アートマネジメントコース(以下:アートマネジメントコース)をもっと深堀りするべく、担当教授の古橋 祐先生と、学生さんにたっぷりお話を伺いました♪

この記事を読む前に、前回の記事を要チェック!

アートマネジメントコースの3年生が企画・制作・運営を行った公演に密着しました。

写真:左から名取さん(仮名)、今村さん(仮名)、古橋祐先生

〜アートマネジメントコースの3年生が企画した今回の演奏会について〜

──お二人は今回の公演ではどのような役割を担当しましたか?

今村さん:二人とも広報で、そのなかでも私は主にチラシの配架を担当していました。協賛してくださる所に手配りしたり、警察に許可を取って駅前でビラ配りも行いました。

名取さん:私は主にプレスリリース担当で、メディアへのアプローチをしていました。より多くの方に知っていただくために、どこに情報を出したらいいのかを考え、新聞社に掲載していただけないか自分たちで連絡を取ったりして、ウェブメディアなどに取り上げていただくことができ、テレビ2本とラジオにも出演しました。

古橋先生:「授業=ひとつの会社」で、みんなで一つの会社を切り盛りするような感覚です。前公演と本公演では制作グループが2つに分かれて稼働していましたが、誰が何を担当するかなどのグルーピングや、どう準備を進めていくかは毎年学生さんに任せています。

──公演の準備はいつ頃から行うのでしょうか?

古橋先生:公演の準備は6月頃から行います。コースの学生全員が企画を出し合いプレゼンテーションをして…というのを繰り返します。ただ内容の面白さだけではなく、アーティストとのスケジュールや金銭的な問題を含めてふるいにかけて企画を決めていきます。夏休みを越えると公演日があっという間に近付くので、「夏休み明けにチケットを売りはじめること」を目指して、出演交渉からチラシのデザインまで含めて、夏休みの前にはある程度決めなくてはいけません。

──コース生23名全員が2〜3本も企画を出したら、選ぶのが大変そうですね…。

古橋先生:選ぶ側としては「学生だからこそできること」を軸にして選ぶようにしています。というのも、前回のバリトンサックス八重奏の公演ですが、実はチケットが本当に売れるのか半信半疑でした(笑)でも来ていただいた方々からは、同じ楽器8本でこれだけ幅が出るんだ!面白かった!等と喜んでいただけたので、これも学生ならではの企画だったなと感じます。

あと、公演を行う条件は「有料公演」「年間で必ず収支バランスをとること」。学園祭の延長線上のような企画ではなく、お金をいただくということは、それに対して責任を持つということ。自分たちが設定した入場料に対するクオリティを担保できる演奏会を開く必要があります。なので、出演していただく方は原則プロのアーティストに依頼しています。授業の一貫ではありますが、あくまで「プロとして」演奏会を作っていくことが前提です。そのため、一から企画を立てて、相手と交渉して場所を取って、宣材を作って、チケットを自分たちで売って、広告を出して、協賛をもらってきて、という流れを責任を持って全て自分たちで動いてもらいます。

──今回の公演を作る上で特に大変だったことは?

名取さん:ただ広告を出しただけでは見てもらえない可能性があるので、どう表現をしたらもっと色々な方に見てもらえるのかを意識してプレスリリースを考えることが大変でした。新聞社は比較的ご高齢の方に見つけていただけるかな…と、媒体によってターゲットを意識して考えるのが難しかったです。

今村さん:公演の内容に合わせて、どういう人が興味を持ってくれるのかを想像し、宣伝に効果的な場所を探し出すのが大変でした。ただチラシを置くのではなくて、例えば前回の公演では、サックス奏者や管楽器奏者に需要があると考え、楽器屋さんや吹奏楽公演を探して、チラシを置かせていただけるようアプローチしていました。

──外部の方々とのやりとりも多そうですね。

今村さん:私たち広報は制作班の人と比べると出演者との関わりがないですが、チラシを作って「このデザインで問題ないか」と出演者に許可を取る際などに関わっていました。制作班の子達は、リハーサルの日程を決めたり、当日までメールでのやりとりが多かったと思います。

──その際、何か気をつけていたことはありますか?

名取さん:「連絡はなるべく早く返す」ということです。あとは、きちんとキャッチボールになるような連絡の取り方を心がけていたこと。敬語の使い方を間違えてないか毎回緊張しながらメールを打っていました(笑)

古橋先生:今はメールで取材依頼を済ませていますが、昔は学生さんに「直接会って交渉」してもらうことが多かったです。今まで本数でいうと累計40本以上公演を行っているので、色々なことがありました。お金が無いから無理だろうと思っていた方でも学生の想いが通じて「やってみたい」と言ってくださる方もいて。学生が考えた企画で共演したことを機に、その後も共演する関係が続いている方々もいらっしゃるので、そういうのは教員としても嬉しかったですね。

──本公演を通じて学んだことは?

名取さん:次に活かしたいと思うことは「計画的に」です。新聞社とのやり取りがギリギリになってしまったことで公演直前の掲載だったので、前もってご連絡をして、掲載日を決められたかなと反省しています。きっちり計画を立ててもその通りにいかないということも実感したので、次は余裕を持った計画づくりを心がけたいですね。

今村さん:計画的にというのは私も同じです。「ここにもチラシ置けたのか」と落とし穴がいっぱいあったので…。

古橋先生:高校の吹奏楽部の定期演奏会などであれば、基本的に自分たちが満足すれば終わりですよね。でも、我々はお客様に次の公演にも来てもらわなければいけない。それがアマチュアとプロとの1番の違いです。学年は変わってしまうけれど、今日来ていただいたお客様に「来年のコンサートも来たい」と思ってもらいたい。そのため、公演後には必ず報告書を作り、来年度の3年生に引き継ぎます。

──今後の目標はありますか?

今村さん:また2023年のゴールデンウィークには公演があって、今度は後輩と一緒に行うので、私が先輩方に教えていただいたことや自分が学んできたことを引き継ぎたいです。

古橋先生:「人に教える」って重要ですよね。知らず知らずのうちに成長していることに自分で気づくことができる。だからこそ、下の学年と重なるような機会を設けています。

〜学生生活について〜

──アートマネジメントコースに入学を決めた理由を教えてください!

今村さん:高校生の時に所属していた吹奏楽部で学内演奏会で全て統括する係をしていたので、大学でより専門的に勉強したいと思いました。特に本学は雰囲気が合っていると感じたので、このコースに決めました。

名取さん:私も中高6年間吹奏楽部に所属していて、特に高校での経験が大きかったです。毎年定期演奏会を行っていたのですが、プログラム制作やチケットの販売、演出も全て学生に任されていました。演奏会を作りお客様が喜ぶ姿を見た際の達成感を感じ、もっと専門的に学びたい、将来コンサートマネジメントの仕事に就きたいと思い、入学を決意しました。

──ふたりとも高校時代から経験があるのですね!普段からコンサートにはよく行きますか?

今村さん:コンサートもよく行きますが、バンドやJ-popの音楽をよく聴くのでフェスなどに行くことが多いです。

名取さん:私は演劇が好きなので、演劇の舞台を観に行くことが多いです。

──学生生活で特に楽しいと感じることは?

今村さん:「学科やコース関係なくみんなで仲良くできる環境があること」です。オープンスペースが各階にあり、友達と過ごせる環境が整っていて、さらに今年からはハイカウンターも設置されて、より過ごしやすいと感じます。 あと、食堂の朝食が100円なので、毎朝食堂で朝食を食べるのも楽しみです(笑)

名取さん:私も「コース関係なく色々な人と関われること」が楽しいです。1年の時の「基礎ゼミ」という授業で、コース関係なく5人一組になって、一つのものに取り組む時間があるんです。そこで交友関係が広がって、今でも仲良しです。

──特に印象に残っている授業を教えてください!

名取さん:2年生の時の「芸術運営実習」という授業です。大学主催のコンサートを手伝うという授業なのですが、ホールで開演した際の立ち振る舞いなどが学べました。この授業がなければ、自分たちで作った企画も運営できないと思うので、2年生のうちに基本を学べて良かったです。

今村さん:「舞台芸術概論」です。海外のオペラなどの公演を、実際にその作品に携わった先生が解説を入れて見せていただきました。「実はこの俳優は急に差し替えたんだよ」など裏話を聞けたのがとても楽しかったです。

──実際に作品に携わった方が先生としていらっしゃるのは貴重ですね…!

古橋先生:有名なプロデューサーなど、世界の現場を経験した先生が多いというのは昭和音楽大学の強みだと思います。あと授業のことで追加でお話すると、プロの現場では自分のポジションが決まっていて、それをこなすという考え方ですが、ここでは全員が色々なポジションを入れ替わり立ち替わり体験することにしています。すると、色々な職種を体験して向き不向きを知ることができるので、卒業後はその中で自分に合ったポジションを選んでもらえたらと思っています。

──確かにカリキュラムの流れも2年生では基礎、3年生から実践という、卒業後を見据えた流れになっているように感じました。

古橋先生:そうですね。2年生ではコース主催の公演ではないですが、学内公演の表方と裏方を手伝うという授業が一年間あり、それに加えて、企画を2〜3週間に1度提出する授業もあります。1年間で一人7〜8本企画を考えて、企画力を鍛える授業です。この2つの授業を合体させたような形で、3年生の授業をするという流れになっています。

──インターンもカリキュラムの一貫とのことですが…

古橋先生:はい。劇場はもちろん、ポピュラー音楽の現場のインターンもあります。ポピュラー音楽の業界で活躍する先生も、インターンシップ担当として非常勤でいらっしゃるので、相談する機会もあります。様々な経験を積んだ教員の今までの繋がりがあるというのは大きな強みですね。今年は、毎年インターンシップを受け入れていただいている地方の劇場に就職する学生さんもいるようですよ。

──最後に、アートマネジメントコースを一言で表すと…?

今村さん:「物事は経験」

名取さん:「協調性」

古橋先生:「当たって砕けろ」

編集後記

今回は昭和音楽大学のアートマネジメントコースの3年生の学生企画にお邪魔しました!

先生方も皆さんお優しく、広いホールも隣接している素敵な環境で学生のうちから経験を積めるのは羨ましい限りです。公演での皆さんの顔つきはプロそのもの!今後、またどこかでご一緒できる日を楽しみにしています…!