【Meet The Orchestra】ポップスオケから生まれた新たな弦楽合奏団!クラシック音楽とポピュラー音楽をシームレスに聴いてほしいと語る、大きな挑戦に向かって走り出した ”アンサンブル・ミラージュ(SEAM)”  立ち上げメンバーの狙いとは。


今回は、ポップス専門オーケストラ Naoya Iwaki Pops Orchestraの若手メンバーが新たに立ち上げた弦楽合奏団「String Ensemble à la Mirage/アンサンブル・ミラージュ(通称:SEAM)」代表・清沢さんと3人のメンバーにお話を伺いました。

なんと初公演は2023年9月に開催予定!公演のテーマやプログラムのこだわり、そして、それぞれが考える立ち上げの想いと新たに挑戦していきたいこととは…。若手メンバーが一丸となって作り上げる弦楽合奏団の核心に迫ります。

アンサンブル・ミラージュ/String Ensemble à la Mirage(SEAM) 
Naoya Iwaki Pops Orhestra(NIPO)の若手メンバーを中心として2023年に結成したクラシックの弦楽合奏団。「音楽のジャンルには垣根がない」というメッセージを多くの人に伝えることをテーマに、クラシック音楽の演奏のみならずNIPOで専門的に扱ってきたトラディショナル・ポップの手法を通して20世紀の様々な音楽にも焦点を当て、音楽のジャンルを繋ぐ縫い目(seam)となる楽団を目指す。第1回演奏会は若手メンバーに加えてNIPO首席などゲストを迎え、2023年9月6日に文京シビックホール小ホールにて開催予定。

Naoya Iwaki Pops Orchestraに密着した記事はこちら↓(取材当時:2022年8月)
「【Meet The Orchestra】日本発、ポップス専門オーケストラ「NIPO」に迫る!大学時代の仲間とともに”やりたいこと”を実行するチカラ。」
https://www.oto-pedia.net/archives/3603


NEWS

7月14日よりクラファンのお知らせ!
音楽ジャンルを繋ぐ弦楽アンサンブルのコンサート開催を目指して

https://congrant.com/project/operaamici/7578

代表・清沢さんからのメッセージをご紹介!
この度、NIPOの若手メンバーを中心とした新しいクラシックの弦楽合奏団「アンサンブル・ミラージュ」を立ち上げました。9月6日に文京シビックセンター小ホールにて第1回コンサートを計画しており、これに際して7月14日より1ヶ月間限定で活動資金の寄附を募るクラウドファンディングを開始します!
演奏会の実現のため、皆様のあたたかいご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします。

【公演情報】

アンサンブル・ミラージュ 第1回公演 
〜国民楽派と映画音楽を紡ぐ弦楽の旅〜

2023年9月6日(水)開場18:30 開演19:00
文京シビックホール 2F 小ホール 
一般3,000円 学生1,500円 高校生以下500円
チケットはこちらからもお買い求めいただけます▷https://teket.jp/7293/24773

お問い合わせ:mirage.seam@gmail.com

主催:String Ensemble à la Mirage
協力:Naoya Iwaki Pops Orchestra
助成:公益財団法人さわかみオペラ芸術振興財団「みんなの寄付」


はじめに、代表の清沢さんの普段の活動について教えてください!

清沢さん:Naoya Iwaki Pops Orchestra(以下NIPO)コントラバス奏者の清沢健生と申します!今年の春に東京音楽大学大学院修士課程を卒業し、NIPOのメンバーとして活動しながら、クラシックの分野でも幅広く活動しています。また、この度新たに設立しましたString Ensemble à la Mirage/アンサンブル・ミラージュ(以下SEAM)の代表を務めています。

清沢さんがコントラバスと出会ったのはいつ頃ですか?

清沢さん:幼い頃からクラシックピアノに親しんではいましたが、コントラバスとの出会いは中学校の吹奏楽部でした。夏のコンクールに向けて毎年大曲に取り組むのですが、1年目はジャズの要素を色濃くもつハードロック、2年目は和楽器を取り入れ日本の風土を表現した楽曲、3年目はサバンナの情景描写や民族舞曲が登場するアフリカンミュージックと、周りの中学校に比べて非常にバリエーションに富んでいた気がします(笑)。部活動では古典的な吹奏楽やクラシックにも触れましたが、この頃の経験によって様々な音楽ジャンルへの関心が培われたのではないかと、当時の顧問の先生にはとても感謝しています。

中学生から様々なジャンルの音楽に触れられる機会は貴重ですね!今、コントラバス奏者として所属されているNIPOはどういったオーケストラでしょうか?

清沢さん:NIPOは作編曲家の岩城直也氏を中心に2021年に立ち上げたポップスオーケストラで、1930~50年代に欧米で流行したトラディショナル・ポップ」というポピュラー音楽のアレンジ方法や奏法の再現をコンセプトに活動しています。たとえば、映画『オズの魔法使い』の“虹の彼方に”や、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の“私のお気に入り”といった曲がこのジャンルに当たり、ストリングスを主体にしたクラシカルなオーケストレーションが特徴の音楽です。これまで八神純子さん、クリス・ハートさん、武部聡志さんら多くのアーティストと共演し、私たちの個性的なオールドポピュラーなサウンドをお届けして参りました。

NIPO九州公演
NIPO府中公演

なるほど。ご自身の経験とNIPOでの活動、そして今回の立ち上げに繋がっていきそうですね。

清沢さん:様々な音楽のジャンルに惹かれる僕にとって、トラディショナル・ポップの再現を目指すNIPOの音楽作りは、クラシックとポピュラーの両面性をもつ非常に魅力的なものでした。NIPOの活動はアーティストサポートが多く演奏を聴いて下さる方はポピュラーファンの方が中心のため、クラシックファン層にもこの古いポピュラー音楽の魅力を伝えたい!と思ったのがSEAM設立のきっかけです。また若手メンバーを中心にクラシック音楽にアプローチすることで、NIPO全体の更なるアンサンブル技術の向上を目指しています。

清沢さんが考えるSEAMという団体とは?

清沢さん:SEAMはあくまでもクラシックの弦楽合奏曲をメインに演奏する団体ですが、NIPOが得意としてきたトラディショナル・ポップの中からクラシックとの関連性が強い楽曲も同時にピックアップすることで、クラシックの目線からポピュラーにもアプローチしたいと思っています。クラシック音楽とポピュラー音楽をシームレスに聴いていただく、新しい音楽体験をお届けできたら幸いです。

また団体名にあるように、空と地平線、あるいは水平線が溶け合う蜃気楼(ミラージュ)のように、クラシック音楽とポピュラー音楽の両方の要素をもつ「オールドポピュラーなサウンド」を武器に、2つの音楽の縫い目(seam)となる楽団になることが、私たちの活動理念でもあります。

9月に第1回公演が控えていますが、今回のテーマは?

清沢さん:クラシック音楽とポピュラー音楽を結びつけるため最初に選んだものは、19世紀の国民楽派の音楽と、その音楽に多大な影響を受けた20世紀の映画音楽です。国民楽派の音楽家は、それまでのクラシックの書法を発展させつつも民族音楽の要素などを取り入れ多くの人に愛される音楽づくりを目指し、その大衆の心を掴もうとする波は20世紀以降の映画やミュージカルの音楽に大きな影響を及ぼしました。

こうした観点から、「国民楽派と映画音楽を紡ぐ弦楽の旅を演奏会のテーマに掲げています。

プログラムもテーマに沿って選曲されたのでしょうか。

清沢さん:はい。ドヴォルザークの弦楽セレナーデとニーノ・ロータの映画『道』のテーマをメインプログラムに据えています。ニーノ・ロータはクラシックの作曲家としては広く知られてはいませんが、代表的な作品には『ロミオとジュリエット』や『ゴッドファーザー』など数々の映画音楽が挙げられます。そしてこの『道』のメロディー、実はドヴォルザークの弦楽セレナーデ第4楽章から着想を得ているんです!クラシックとポピュラーが地続きであるという確かな歴史がここにあります。他にもジャンルをつなぐ楽曲をご紹介したいと思っています。

今後、”SEAM”という新しいチームで挑戦していきたいことは?

清沢さん:クラシック音楽をキャッチーに聴いてもらうコンサートや、ポップスをオーケストラで演奏するコンサートは近年増え、より多くの人に音楽を楽しんでいただく試みは広がり続けています。その多くは1つの音楽団体があらゆる方向性の演奏会をするというものですが、私たちはポップス専門のNIPOとクラシック専門のSEAMという2チームによって垣根のない音楽体験を創り出したいと考えています。この両輪の特性を活かすためにも、まず今回のコンサートでは「クラシック音楽の系譜として映画音楽を演奏する」という奏者にとっても新しい試みにチャレンジしたいと思っています。

そうした映画音楽への取り組みの一例として、NIPOの過去の演奏から映画『タイタニック』の演奏をお届けします。トラディショナル・ポップ形式のアレンジ、及びクラシック音楽のようなアプローチを実際に感じていただけると嬉しいです。

最後に、演奏会を通してお客様に伝えたいことを教えてください。

清沢さん:音楽の歴史、クラシックとポピュラーの関係・・・演奏会ではプログラムノートを通してまた説明口調でお話しするかもしれません。しかし私たちは音楽学者ではなく一介の演奏家です。難しいことを語らずとも演奏の力だけで「音楽のジャンルには垣根がない」ということをお伝えできたらと願っています。

プログラムは時代の流れを意識し、前半では19世紀末から現代へ時を進め、後半では再び19世紀に遡るという曲順にすることで、お客様が時代を行き来できるような工夫を凝らしています。音楽のつながりが現代まで、私たちの時代まで続いているということを、是非体感していただきたいです

9月6日公演のプログラム

SEAMメンバーのみなさんにもお話を伺いました!

左から清沢、奈良原、淵野、宮川

みなさんについて教えてください!

奈良原さん

ヴァイオリン奏者の奈良原裕子です。桐朋学園大学を経て、アメリカのボストンにある音楽院を卒業しました!現在は、Naoya Iwaki Pops Orchestra (NIPO)としての活動、また国内のオーケストラやスタジオレコーディング等で幅広く演奏活動をしています!その他に、音楽の楽しさを少しでも伝えられたらと思い、指導者としても精力的に活動しております! 

淵野さん

ヴァイオリン奏者の淵野日奈子です。昭和音楽大学を卒業後、同大学院修士課程を修了しました。現在はフリーランス奏者としてオーケストラへの出演、レコーディング、リサイタルやイベント演奏等幅広く活動しています。また昭和音楽大学にて合奏研究員、附属音楽教室では講師を勤めており、指導者としても活動しております。

宮川さん

東京藝術大学大学院室内楽科デュオ専攻の2年に在学してます、ヴィオラ奏者の宮川清一郎です!私は現在、学生、ヴィオラ奏者、YouTuberとして活動しています。
ヴィオラ奏者としては、NHK交響楽団をはじめとするオーケストラへの出演、映画、アーティスト楽曲のレコーディング、自身主催のリサイタル、など幅広い活動をしています。藝大同期4人による音楽ユニット「お茶かる」を発足して、YouTubeを通して音楽活動をしています!(現在YouTubeのチャンネル登録者は1.4万人)

今回SEAMの立ち上げに際し、参画しようと思ったキッカケは?

奈良原さん

私は、留学する以前はクラシックを中心に勉強していたので、ジャズやポップス音楽とは疎遠でした。しかし、アメリカ生活を通してそれらの音楽に多く触れた経験から、ジャンルを問わず音楽自体の魅力に気づく事ができました。その様な心の変化があった中で、今回代表の清沢さんが”こんな団体を立ち上げたいんだ!”という熱い想いを伝えてくれ、もしそれが実現出来たらと思うと心がとても躍りました!!

淵野さん

NIPOで創る音楽からは「音を楽しむ」という音楽の本質を実感することができ、クラシックを中心に勉強をしている私にとって、ジャンルを超えた魅力を感じることができた音楽です。クラシック音楽のファン層にもこの古いポピュラー音楽の魅力を伝えたい!という思いでクラシックとポピュラー音楽を紡ぐため設立されたSEAMの理念に賛同し、今回携わらせていただくこととなりました!

宮川さん

SNSの普及も相まって、現在「流行り」「廃り」というものが猛スピードで入れ替わる時代だと思っています。そんな時代だからこそ、「いい音楽ってなんなのだろう。不朽の名作とはなんなのだろう」と考えました。時代の波に流されず、長い間聴かれてきた音楽の良さを再発見したい!という思いから今回の立ち上げに加わることにしました。そして演奏会に来ていただける皆様にも感じていただきたいです!

”SEAM”という新しいチームで挑戦していきたいことは?

奈良原さん

SEAMのメンバーは全員年齢の近い奏者なので、その特徴を生かした濃厚なアンサンブル、そしてエネルギッシュな演奏を目指したいです。また、NIPOで培ったオールドポピュラーなサウンドの心地よさを、是非多くの方に知っていただき、さらにそれを好きだと感じていただけるよう、高いサウンドクオリティを目指したいと考えています!

淵野さん

NIPOで学んだことを今度はSEAMというチームで、またクラシックの曲でも還元し、ハイクオリティなサウンドや音楽を目指していきたいです。同世代の優秀なメンバー達とクラシックもポップスも、ジャンルの垣根を超えた音楽をお届けできたらなと思います!

宮川さん

クラシックやジャズ、ポップスなど、音楽のジャンルというのは話をしたり説明をする時には便利なのですが、実際それらが生まれたのはグラデーション的であり、境目を作ることはできません。だからこそ歴史が生んだ変化というものを楽しむことができると思います。なのでそれが体験できる演奏会、感じられる演奏会というものを作っていきたいです!!

最後に、演奏会を通してお客様に伝えたいことは?

奈良原さん

ジャンルという垣根を越えた、音楽自体の魅力に気づいてもらえる様な演奏会にしたいです。アメリカ留学中の私のように、普段聴かなかったジャンルでも、聴いてみたら意外と自分の好きな音楽との共通点があるかもしれない。そんな、聴きに来て下さるお客様にとっても新たな”好き”に気付けるきっかけになれたらなと強く思っています。

淵野さん

音楽の魅力をお伝えできればと思います。ジャンルは関係なく、日常生活の様々なところに音楽は必要とされており、普段何気なく耳にしています。この演奏会がきっかけとなり、あらゆるジャンルの音楽に興味を持っていただき、音楽の楽しさを実感してもらえたら嬉しいです。

宮川さん

とりあえず何も考えずに聞いてほしいです!もちろん私たちはいろいろな思いを込めて演奏しますが、必ずそう読み取らなければいけないルールがあるわけでないですし、それが本来の芸術の楽しみ方だと思います。なのでむしろ皆様が何を考えたか、伝わったのかをこちらが聞きたいですね(笑)。私からお伝えできることは「楽しんでね〜」ってことくらいです!!