【ドイツの音大事情】授業と留学生同士の交流は?日本の音大との違いは?

こんにちは!ヴィオラ奏者の辻 菜々子です!

ドイツ留学の連載第2回は、ドイツの音大の授業と留学生同士の交流について書いていきたいと思います。

日本の音大とはどう違うのでしょうか?

デトモルト音大の正面
長い階段の先にはレッスン棟

授業について

・実技のレッスン 

私の先生のレッスンは基本的に週に1回1時間です。さらに毎週末にクラス(門下)で集まってコンクールやオーディションに向けて試演会をしたり、楽器の構え方や音階などの基礎をもう一度見直したりする時間(Gruppenstunde)があります。ドイツではクラスでの繋がりが強いなと感じます。冬ゼメスター(10月始まり)、夏ゼメスター(4月始まり)と半年ごとに学生が入れ替わるので、同期はいても学年ごとのくくりはありません。C年、D年とか懐かしい…!(ドイツ音名CDEF…に掛けて、藝大では1年生=C年、2年生=D年…と呼ばれています)

またドイツの音大にはコレペティという制度があります。各クラスに専属のピアニストがいて、試験曲に限らず勉強したい曲をピアノと演奏することができるのですが、合わせの際に先生とは違う視点でアドバイスをしてくれるのでとても新鮮でためになります!

同時に、オーケストラスタディにも力を入れています。Schott社から各楽器ごとに出ているオケスタ集(画像参照)はドイツでは必携で、実際にこの中のオケスタがオーディションの課題になります。またプロオケの現役の団員さんがオケスタの授業をしに来てくれるので、将来オーケストラで働きたいと思っている人には貴重な機会です。

※オーケストラスタディ:オーケストラ曲の一部が抜粋されており、ソロの技術だけではなくオーケストラで必要な技術等の勉強をする通称オケスタ。

オーケストラスタディの楽譜


・座学などの授業

楽典・ソルフェージュ・副科ピアノはもちろん、音楽学・音楽マネジメント・音楽心理学・合唱など様々な授業を受けましたが、特に印象に残っているのはアナリーゼ(楽曲分析)の授業です。教室には10人弱しかおらず、先生の話を受け身で聞くのではなく、学生と先生が討論しながら一緒に答えを探していくという雰囲気です。私やアジア人の友人は発言する余裕などなく、まず今何についてのお話をしているのか理解するので精一杯でした。まさにパリのコンセルヴァトワールに入学したばかりののだめと同じ状況でした(笑)

音楽学の授業(例えばメンデルスゾーンと彼の妹の手紙を分析する授業や、建築・絵画)を通して文化史を学ぶ授業)ではプレゼンテーションをしたりレポートを提出しなければならないので、ドイツ人の友人に文法のチェックなどを手伝ってもらい、なんとかやり遂げました。ちなみにドイツ語の授業は、デトモルト音大だとレベル別に無料の語学クラスが開講されています。

選択科目ではアレクサンダー・テクニックやヨガも取ることもでき、良い気分転換になります。

・室内楽 

自分が勉強したい曲に合わせてメンバーを集めます。レッスンを受け本番で弾けば単位がもらえる、というシステムです。藝大の時は古典のハイドン、モーツァルトなどのアンサンブルの基本から学びましたが、ドイツでは特にそういうことはなく、なんと友人の弦楽四重奏デビューはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番だったそうです…。(ショスタコーヴィチは演奏技術だけではなく、聴き手からしても難易度高め….是非動画をチェックしてみてください….!)

・オーケストラ 

基本的に日本の音大と変わりませんが、パートごとにリハーサルをして難しいところなどを集中的に練習するといった合理的な進め方が多いです。初めのうちは小節番号や練習番号などを聞き取ってすぐに反応することが大変かもしれませんが、経験あるのみです。またこれは弦楽器の話になりますが、ドイツ語でダウンボウのことをアップ(Abstrich)というのは今でもややこしいです!!

・卒業試験

藝大学部の卒業試験は20分弾けばよいのですが、デトモルト音大の場合は…

1日目:45分のリサイタル、一般公開

2日目:オーケストラのオーディションで弾く協奏曲を含む45分のプログラム、2週間前にもらう新曲、オケスタ15個(その中から当日指定)、初見演奏

と盛り沢山です。

何から練習すればいいかわからなくなるほど大変で、コレペティの方にもたくさん合わせをしていただきました。そして当時はまだコロナのワクチンが普及する前だったので絶対にかかってはいけない!という緊張感もありましたが、無事終えることができました。

練習室(ここはヴァイオリンの教授の部屋で、レッスンがあるとき以外は学生が自由に使うことができる) 
学校のホール

いろんな国の友達ができる!

ドイツの音大ではたくさんの留学生が勉強していて、ヨーロッパ各国はもちろん、南米やオーストラリア出身の友人もいます。アジア人は特にたくさんいるので(1番多いのは韓国人?)、学校の練習室の注意書きがドイツ語、英語、そして韓国語で書かれているのには驚きました。

ドイツ語が母国語ではない者同士、わからないながらも助け合っていくうちに仲良くなりやすいと思います。それぞれの言語での簡単な日常会話を教えあったり、お互いの国の料理をふるまったり、時には政治の事情を教えてもらったり…。

自分の国や出身地についてはまず話題になるので(なぜかよく人口を聞かれる!)、説明できるようにしておくとよいのではないでしょうか。いろいろな国の人と知り合うことで、ドイツ留学がより充実したものになると思います!!

学校のオペラ公演はデトモルトの州立劇場で行われる
猫よく見かける