【オーストリア留学Vol.2】ウィーンへ渡り、肌で感じた“音楽の都”と呼ばれる理由

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Vol.2では留学先での実体験をお届けいたします!

クラリネット 土屋陽平

現地到着からの様々な手続き

  • 交通機関

まず最初の難関は空港から住居まで無事に着けるかどうかです。
冗談ではなく、自分の場合はまず空港でスーツケースを破壊されました…。
着いて早々ガムテープでぐるぐる巻きにされたスーツケースを見て、愕然としたのを覚えています。

とりあえず気を取り直し、ウィーン市内へ向かうことに。
空港から市内への主なアクセス

・快速電車CAT(空港特急) 11€ 
※CAT=シティエアポートトレイン 空港と市内を走っている電車
・タクシー ??€
・リムジンバス 8€
・Sバーン(普通・快速電車)4€

の4つです。
正直タクシーはやめた方がいいかもしれません。
というのも、ちゃんとした業者に紛れて違法営業のタクシードライバーが居る可能性があるからです。
その場合高額な運賃をふっかけられるかもしれません。

初心者であればCATを使う事をお勧めします。
Landstrasse(ランドシュトラッセ)駅へ直通で、スーツケースを置くスペースもあります。
席が空いていれば当日券がありますが、公式サイトで予約しておくのがスマートでしょう。

電車を乗り継ぎ、家に着いたらまず大家さんに挨拶をしましょう。
そこで家賃についてや、ごみの日などの説明を受けると思います。

自分が住んでいた家は月々500€で水道代・光熱費込みでした。
そしてなんと家賃は毎月手渡しという…

  • 手続き

さて、一息ついたら次はスマホを使えるようにしましょう。
SIMフリーのスマホを日本で購入しておくと圧倒的に楽です!

方法は簡単で家電量販店やスマホショップでSIMを購入するだけ。
僕の場合は何か書類を書いたりする必要も無く、身分証明書なども必要なく、
あとはSIMを入れてパスワードを入力するだけで本当に使えました!(会社によっては必要になる場合もあるので確認してください。)
現代人はスマホが使えるだけで大分安心すると思うので、まずやっておくといいと思います。

そして次はMeldezettel(住民票)の取得です。
向こうで銀行口座を開設するのも、ビザを取得するのも、とにかく何をするにも必要になってきます。

まず自分が住んでる区じゃなくていいので、区役所に行ってください。
申し込み用紙を書いて番号札をとったら、呼ばれるまで待機です。
呼ばれたら申し込み用紙とパスポートを提出すれば、簡単に取得できます!

まだビザを取得するためにやるべきことはあるのですが、この辺で学生証を取得しておいた方がいいです。
向こうの音大は特に入学式なども無いので、自ら事務局に赴き取得してください。
方法が分からなければ自分の先生に連絡するもよし、日本人の留学生を捕まえて助けを乞うもよしです。

次は銀行口座です。
実はこれもビザを取得するのに必要なので、開設した方がいいです。

・パスポート
・住民票
・学生証(在学証明書)

を持って銀行に行ってください。
そこからの流れですが、僕は日本人の在住歴が長い方に助けていただいた部分が多いのですが、そんなに難しい書類を書いた覚えはありません。だれか協力してくれる人がいると安心ですね。

さて、あとビザのために取得する必要があるのは健康保険だけになりました。
本当に大変ですよね…
健康保険はWGKK(ヴェーゲーカーカー)という会社があるので、そこで手続きをします。

・申し込み用紙
・住民票
・学生証
・パスポートのコピー

を持って平日の7:00~14:30にWGKKに行ってください。
加入時にビザを申請するときに必要な保険加入証明書をもらうのを忘れずに!
学生保険料は月々60€ほどです。

ここまできたらようやくビザを取得できます。
必要な書類をおさらいしておきましょう!

・申請用紙
・写真1枚(パスポート用のもの)
・パスポート原本およびパスポートのコピー(白紙以外全ページ)
・入学許可証・在籍証明書・受け入れ証明
・無犯罪証明書(アポスティーユが必要)
・戸籍抄本(認証翻訳文+アポスティーユが必要)
・経済的証明書(オーストリアの銀行の残高証明)
・現地の住居証明
・Meldezettel(住民票)
・健康保険加入証明書
※アポスティーユ=日本の官公署,自治体等が発行する公文書に対する外務省の証明のこと。

これらを揃えたらMA35(ウィーン市35 課サービスセンター)という建物に行って番号札をとり、呼ばれたらビザを取りに来た旨を伝えてください。
書類が受理されたら審査があり、1週間~長くて数か月待たされることもあります…
あまりに待たされたら問い合わせることをお勧めします!

ここまでやったらやっと一安心です…本当に大変ですよね。
でも念願の留学生活のためと思えば乗り切れるはずです!

  • 大学生活

さて、大学生活はとくに入学式も無いのでぬるっと始まります。
出遅れないように先生とこまめに連絡を取り合ってください。
自分が通ってた大学はレジュメやカリキュラムの選択など全てオンラインで完結しました。
Certificate of Performance学科は必修という概念が無かったので、好きな科目を履修し放題です笑

基本的には演奏系の科目で固めたので、専科のレッスン、コレペティとのレッスン、室内楽、オーケストラという感じです。
その他に友人の専科の授業にTrioで参加したり、ウィーン国立音大の作曲科の発表に助演で行ったりもしました。
聴講や参加も割と自由で、とにかく演奏の場に困る事がありませんでした!

授業やレッスンはとにかく先生が素晴らしく、情熱的に教えてくれます。
あまりに情熱的にレッスンをするので、喋り過ぎてよく息切れしていたくらい。
ウィーンだったらモーツァルトやベートヴェンなどその地に縁のある作曲家の曲を持っていくと、
かなり濃い内容のレッスンを受けれると思います。

もちろん学生でありながら演奏の仕事も受ける事ができます。
大抵は先生から話がくるのですが、同級生や思わぬところから話が来るので交友関係は広げといた方がいいと思います!
一番印象に残ってる仕事はウィーン市主催のチャリティーオケの助演で、本番の会場がなんと楽友協会の黄金のホールでした!
黄金のホールで演奏できて200€ももらえて、最高の経験になりました。
なので、とにかく名前を知ってもらって連絡先を交換しまくったほうがお得です。

楽友協会 クラリネットの座席からの一枚

そしてウィーンに留学したら演奏会も聴き放題です。
本当に毎晩のようにオペラ座や楽友協会に通いつめました。
年間で行ったコンサートは軽く100を超えると思います。
ちなみに立ち見席はオペラ座のGalerie(場所)なら3€、楽友協会なら6€で聴けます。
日本に帰ってきたらあまりの演奏会のチケットの高さに愕然とするので、とにかく聴きまくるのをお勧めします!

現地で購入した演奏会のチケットの山

ウィーンの食事事情についてもお話します。
正直ウィーンの食事は美味しいですし、食材も割とリーズナブルな値段で手に入ります。
特にチーズやお肉、ワインなどが格安で売られいてるのでその手の食材が好きな人にはたまらないと思います!
あと牛乳が搾りたての牛乳のようにコクがあって本当においしかったです。
自分は割と自炊をこだわる方だったのですが、毎日外食でも多種多様なお店があるので飽きないかなと思います。
でも外食はちょっとお高めなので、経済的に余裕があれば…という感じです。

もちろん日本食が売ってるスーパーもありますが、やはり高いです。
どうしても日本食が食べたくなったら実家から送ってもらうか、日本食のレストランに行きましょう。


  • 最後に

向こうに行って日本と比べてみて感じたことは、「こんな環境で上手くならないわけが無い」ということです。
街の人々に音楽に対しての理解があり、国が音楽を志す若者を徹底的に支援している。
そのような環境下だからなのか、音大に居る生徒の誰もが自信や野心に溢れているように感じました。
音楽をやるのは素晴らしいことなんだ、世の中の役に立つんだという共通認識があり、自分も誇らしい気持ちになれました。

日本では多くの音大生が、信じられないような高額の学費を払っています。
練習する場所には困り、仕事に困り、電車で楽器を蹴られるなんてこともあります…。
そのような状況下で、音楽を続けられる人がどれほどいるでしょうか。
モチベーションを保ち続けて、技術の研鑽を続けられる人は本当に一握りだと思います。

二つの国を比べた時に、そのような問題が鮮明に浮き上がってきました。
音楽は周りの人や環境が育てていくものでもあるんだなと、強く実感したのを覚えています。

留学を志している方がこれを見ていたらお伝えしたいことがあります。
迷っているのであれば、ぜひ羽ばたいていってください!
そして自分の目で見て耳で聴いて感じたことを周りに広めてほしいです。
世界は広く、こんなにも可能性に溢れているんだということを伝えてください。
そのことが多くの音楽家の力になると信じています。

最後に、今回ウィーン留学の経験を広めるキッカケをくれたペおとペディアさんに感謝したいと思います。
中には数年経っており不鮮明な記憶もありましたが、なんとか思い出しつつ書き終える事ができました。
この記事が、少しでも誰かの力になることを願っています!

現地で出来た友人
空港まで車で送ってくれました!