【学生とプロが一緒に作るコンサート】音楽劇《天岩戸》公演に潜入!洗足学園音楽大学の学生が0から考えた、子どもたちに届けたい演奏会とは…?

2022年11月28日(月)に横浜みなとみらいホールの大ホールで上演された音楽劇《天岩戸》。なんと、洗足学園音楽大学の学生が0から企画と制作を行っています!今回は、特別に公演後にインタビュー!音楽劇《天岩戸》の演出の雨森さん、照明チーフの庄司さん、出演者代表の矢嶋さんの3名にお話を伺いました♪

写真提供:横浜みなとみらいホール(撮影:平舘 平)


〈音楽劇《天岩戸》公演概要〉※公演パンフレットより引用

2022年11月28日(月) @横浜みなとみらいホール 大ホール

【出演】
アマテラス:藤木大地(カウンターテナー)
スサノオ:境 信博(バスバリトン)
案内人:柳澤涼子
ピアノ:林 菜月
横浜市小学校教員
洗足学園音楽大学学生(声楽コース、ダンスコース、ピアノコース)

【曲目】
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」より 第3楽章
杉本竜一:ビリーヴ
山田耕筰:からたちの花
弘田龍太郎:浜千鳥
ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》より 〈喋るな!誰もあいつに忠告などしてはならん!〉
カッチーニ/ヴァヴィロフ:アヴェ・マリア
山崎朋子:大切なもの
村松崇継:Song of Life(生命の奇跡)
橋本祥路:遠い日の歌

【あらすじ】
むかしむかし、太陽の神様アマテラスと風の神様スサノオという兄弟がいました。ある日、暴れん坊のスサノオは神様の国「高天原」を荒らしてしまいます。荒れた高天原をみたアマテラスはショックで岩に隠れてしまいます。太陽の神様であるアマテラスが岩にこもってしまったことで世界から光がなくなってしまったのです…!さて、高天原に住む八百万の神様たちは、アマテラスを外に出すためにいろいろな作戦を試します。アマテラスを外に出して、太陽を取り戻すことはできるのでしょうか…

洗足学園音楽大学の学生にインタビュー!

写真左から:矢嶋さん、雨森さん、庄司さん
◯演出:雨森 あかねさん…洗足学園音楽大学 声楽コース3年生 
◯照明チーフ:庄司 樹さん…洗足学園音楽大学 音楽環境創造コース3年生
◯出演者(音楽チームチーフ):矢嶋 愛実さん…洗足学園音楽大学 声楽コース3年生

──今回、この企画に携わることになったきっかけを教えてください。

雨森さん:昨年(2021年)、声楽コースの2年生が受講した授業がきっかけだと思います。オペラ歌手になるために必要なことを学ぶという授業で、オペラの立ち稽古を学ぶ日もあれば、フランス語のディクション(発音法)を学ぶ日もありました。そのなかの一つに藤木大地先生*の「セルフマネジメント」という授業がありました。演奏の方法だけでなく、音楽家としてどうやって生きていくか、など何週間にもわたって学び、最終日に発表をする機会があったのですが、その日に横浜みなとみらいホールのスタッフの方がいらっしゃっていたので、それがきっかけだと思います。

*藤木大地…カウンターテナー。洗足学園音楽大学客員教授。横浜みなとみらいホール「プロデューサー in レジデンス」の初代プロデューサーとして、様々な公演のプロデュース。今回の音楽劇《天岩戸》ではアマテラス役として、美しい歌声を披露した。

──音楽劇《天岩戸》は神話の「天岩戸」を題材とした音楽劇ですが、この題材を選んだ理由は?

雨森さん:「天岩戸」の絵本を子どもの時に読んだことがあって。白雪姫や浦島太郎ほどメジャーではないし、正義の味方が悪者を倒すとかではないけれど…。引きこもってしまったアマテラスを外に出すために頑張るという、ただ正義が正義で終わるだけではないお話が面白いと思っていたからです。あと、会場に来た小学生が日本の神話を知るきっかけになってほしいという理由で選びました。

──会場には多くのお子様が来場されていましたが、子どもをターゲットに企画されたのでしょうか?

雨森さん:はい、はじめから小学生を中心に観に来ていただけたらと考えていました。

──合唱シーンで横浜の小学校の先生方が登場されていましたが…

雨森さん:小学生にとって、身近な方が舞台上にいるだけで親近感が湧いて観に来たいと思う人も増えるのではと思い、横浜市内にある小学校に出向き、企画の説明と先生方へ参加のお願いをしました。校長先生や企画に賛同してくださった先生方のご協力で、最終的には4校の小学校から合計17名の先生が出演してくださいました!

合唱の様子

──劇中には観客も一緒に手話で参加できるシーンがありましたが、手話を取り入れることになった経緯は…?

雨森さん:劇中で子どもたちと何かできたらいいねと話している中で、横浜みなとみらいホールの新井館長「手話を取り入れたらどうか」というアイデアをいただいたんです。

矢嶋さん:単に一方的に見るよりも、子どもたちも参加できた方が一体感が出て、興味を持ってもらえるのではないかと。コロナ禍で声を出すことに制限がありますが、歌えなくても一緒に参加できて一つになれる!ということで、手話を取り入れることになりました。

オープニングにて、手話をレクチャーする様子

──0から企画・制作をしてみて特に大変だったことを教えてください!

雨森さん:はじめは「やってみたい」という願望だけで作った企画を本当に実現できるのかという不安がありました。脚本も0から作っていく必要があり、初めてのことが多くて何をどうしたらいいのかわからなかった最初の頃が特に大変でした。色々な方からのご協力もあり、たくさんアドバイスをいただいて、無事に終えることができました。

庄司さん:僕は照明チームの中で照明のプランを0から決める役割を担っていたので、横浜みなとみらいホールという大きなホールで魅せるためにはどこに何が必要か考える事が一番大変でした。プランを考える中で、先生方やインターン先でお世話になっているプロの方々、横浜みなとみらいホールのスタッフの方々とも相談することができ、最終的には照明プランを完成することができました。大変でしたが、すごく勉強になりました。

矢嶋さん:私は音楽チームでチーフも担当していましたが、私自身今まで選曲をする経験がなかったのでシーンに合った曲を考えるのが特に難しかったです。そこで音楽チームで何度も打ち合わせを重ねました。小学生の皆さんに生演奏を聴いてもらって、大きくなった時に「あ、これ聴いたことある」と思ってもらいたいという想いがありました。

また、今回は合唱で横浜の小学校の先生方にもご出演いただいたのですが、なかなか全員が集まって練習する時間が取れず…その中でいかにお客様に満足して聴いていただける合唱を作り上げるかという問題に直面したことも大変だったなと感じます。

──大学の授業との両立も大変だったと思いますが、どれくらいの時間を準備にあてられたのですか?

矢嶋さん:全体での稽古に加えて、演者の学生は週に2日、放課後に1時間ほど練習していました。

雨森さん:本番前の全体での稽古は大学の閉館時間まで練習していたので、みんなで急いで走って帰るというバタバタな状況でした…。大学の稽古に加え、出演者の学生は小学校に訪問して稽古を行ったのですが、小学校の先生方は普段のお仕事もあるので、限られた時間の中で合唱と演技の練習をしました。

小学校でのリハーサルの様子

──プロの方と実際に一緒にお仕事をしてみて感じたことを教えてください。

庄司さん:照明に必要なケーブルが何本か、など細かいところまで準備をしていく中で、プロの方は普段からこれほど入念に準備をして、起こりうるトラブルも想定して機材を準備しているのだと身をもって感じました。

矢嶋さん:横浜みなとみらいホールの方と関わらせていただく中で、一つの企画を作り上げるために細かい連絡や打ち合わせをし、試行錯誤を重ねて作り上げているということが分かり、勉強になりました。プロの歌手と一緒に舞台に立って、歌の技術や舞台に立った時の空気感など、何もかもが刺激になりました。

雨森さん:藤木先生は、私たちに対して100%で向かってきて下さるので、私たちも気合を入れて全力でぶつかっていけるよう、演出チームではたくさん打ち合わせを重ねました。演出チームとしては、プロに対しても学生に対しても、演出する上での垣根は無かったように感じています。

──今回の経験を通して、将来に活かせるなと思ったことはありますか?

庄司さん:実務的な面はもちろん、一番はやはり舞台と客席とのコミュニケーションを肌で感じられたことです。学校でも様々な公演の照明を担当させて頂いているのですが、僕が入学した時にはコロナ禍だったため、有観客の環境で本番を行う機会が少なかったんですよね。ですが本番当日は600人以上のお客様が来てくださって、舞台と客席との一体感を実際に感じました。またそこにスタッフとして関われている嬉しさが身に沁みました。この景色を作るために準備しているんだ!と。この思いは今後の糧になると思います。

雨森さん:自分が出演する側の時は一生懸命頑張っているつもりでしたが、いざ稽古の時に演出として出演者の前に立つと、全部見えてしまうんです。真面目に取り組んでるなとか、今日は疲れているんだなとか。先生からはこんなにも丸見えなのか!と衝撃を受けました。自分のレッスンの時には、より気を引き締めようと思いました(笑)

矢嶋さん:私は《天岩戸》に関わったそれぞれの学生が、舞台に立てるありがたさや嬉しさを感じているのではないかと思います。何時間も合唱や演技の稽古を積み重ねて、やっとお客様に届けることができたということ、また、私たちが舞台に立てるまでにたくさんの方が関わっているという事実を経験を交えて知れたことが、将来私自身が表に立つ勉強をしていく上で大きな財産になると思います。

劇中の様子

──みなさんの将来の夢や職業はなんですか?

庄司さん:将来はプロの照明家として劇やコンサート、ダンスなど様々なジャンルの舞台に関わらせて頂けたらなと思います。洗足学園音楽大学には様々なコースがあるおかげでクラシックをはじめポップスやジャズなどの多様なジャンルに関わることができます。この環境は本当に貴重なものなので、在学中に最大限に生かしていけたらと思ってます。

雨森さん:私は演出家を目指しています。子供から大人まで楽しめるような公演を作りたいです。音楽を知らない方や、あまり馴染みの無い方にも音楽の楽しさを伝えていけるような作品を作っていければと思っています。

矢嶋さん:将来どのようなお仕事をするか迷っているのですが…今回のように一つのものを大勢で力を合わせて作っていくというのは、音楽以外のどのような仕事でも必要なものだと感じました。この経験を将来の仕事に繋げられたらと思います。

──最後におとぺディアの読者の皆様に、ひとことお願いします!

雨森さん:今回の舞台は藤木大地先生がホールと学生を繋いで下さり、学生が0から作りました。出演者、スタッフ、指導してくださった大学の先生方、ホールの皆様、そしてお客様が観に来てくださって…と、全員がいて初めてこの景色を見ることができました。取材を受けている私たち3人だけではなく、他の参加した学生にもそれぞれ濃いドラマがあるということも伝わっていたら嬉しいです。

編集後記

客席で公演を拝見させていただきましたが、周りに座っていた子どもたちだけでなく、その保護者の方々もみんな楽しそうに手話で劇に参加している様子が印象的でした!演出も照明も構成も学生が考えたとは思えないほどのクオリティでステキな公演でした。みなさんの今後の活躍を期待しております!